令和6年以降の税務の動向

1.賃上げ促進税制の拡大及び延長

  • (1) 中小企業に対しては、繰越控除制度(5年間)が創設さる予定です。
  • (2) 女性活躍支援・子育て支援をした企業に5%の上乗せ措置がされる予定です。
  • (3) 控除額が段階的に見直され、大企業・中堅企業は最大控除率35%(現行30%)、中小企業は最大控除率45%(現行40%)に引き上げられる予定です。

2.オープンイノベーション促進税制の延長

事業会社がスタートアップ企業の株式を取得した場合、一定の要件の下、株式取得価額の25%相当額の所得控除を認めるオープンイノベーション促進税制の適用期限が2年延長される予定です。

3.中小企業事業再編投資損失準備金制度の拡充

中小企業事業再編投資損失準備金制度(経営資源集約化税制)について、特別事業再編計画(仮称)の認定を受けるなど一定の要件を満たした場合、その積み立てた金額は、その事業年度において損金算入(株式取得価額の90%又は100%)できる措置が加えられる予定です。

4.交際費等の損金不算入制度の延長・拡充

交際費等の損金不算入制度について、適用期限が3年延長される予定です。また、交際費等の範囲から除外される飲食費等の金額が、一人当たり10,000円以下(現行5,000円以下)に引き上げられる予定です。

5.中小企業倒産防止共済事業の適用制限

中小企業倒産防止共済の契約を解除した後に、再契約をした場合には、解除の日から2年を経過する日までの間に支出する共済契約の掛金は、損金の額に算入されないこととなる予定です。

6.消費税に係る帳簿の記載事項の見直し

一定の事項が記載された帳簿のみの保存により仕入税額控除が認められる特例(自動販売機特例、入場券等回収特例)については、帳簿への住所等の記載が不要となる予定です。

7.定額減税

令和6年分の所得税・住民税の定額減税が実施される予定です。 減税額は、納税者及び配偶者を含めた扶養家族1人につき、令和6年分の所得税3万円、住民税1万円となります。対象者は、令和6年分の所得税・住民税に係る合計所得金額が1,805万円以下の者に限ります。

8.子育て世帯の住宅ローン控除の拡充

子育て世帯等が認定住宅等を取得した場合、縮小予定の住宅ローン控除の借入限度額が令和6年に限り維持される(認定住宅5,000万円、ZEH水準省エネ住宅4,500万円、省エネ基準適合住宅4,000万円)予定です。

9.特定の居住用財産の買換え等の場合の課税の特例の延長

「特定の居住用財産の買換え及び交換の場合の長期譲渡所得の課税の特例」、「居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の繰越控除等」、「特定居住用財産の譲渡損失の繰越控除等」の適用期限がそれぞれ2年延長される予定です。

10.住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置等の延長

「直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置、「特定の贈与者から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の相続時精算課税制度の特例」の適用期限がそれぞれ3年延長される予定です。

11.事業承継計画提出期限の延長

「個人の事業用資産に係る相続税・贈与税の納税猶予制度」の個人事業承継計画及び「非上場株式等に係る相続税・贈与税の納税猶予の特例制度」の特例承継計画の提出期限がそれぞれ2年延長され、いずれも令和8年3月31日までとなる予定です。ただし、適用期限についての延長は行われず、個人は令和10年12月31日、法人は令和9年12月31日までのままです。

12.NISA制度の改正

令和6年1月1日から、新NISA制度がスタートします。非課税保有期間を無期限化し、年間投資上限額が120万円のつみたて投資枠と、240万円の成長投資枠を設け、併用可能とされます(生涯非課税限度額の総額1,800万円)。

13.相続時精算課税制度の改正

令和6年1月1日から、相続時精算課税制度について、課税価格から基礎控除110万円を控除できるようになります。相続税の課税価格に加算等される受贈財産の価額は、控除後の残額とされます。

14.暦年課税における生前贈与加算の改正

令和6年1月1日から、暦年課税における、生前贈与加算の加算期間を、相続の開始前7年以内(従来3年以内)に延長され、延長された4年間に受けた贈与については、その財産の価額の合計額から100万円を控除した残額を相続税の課税価格に加算することとなります。